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第10章 四者会談

明け方から降り出した小糠雨が街を湿った空気で包んでいた。麻川駅から徒歩二分、十五階建高級マンションの最上階、遮光カーテンで太陽を完全に遮断したその部屋の灯りは、仄暗い紫色の炎を燃やす不思議な匂いの蝋燭が五本のみだった。室…

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第9章 黒鵺!?

清春のアパートを飛び出して六時間後。蔵馬は今、麻川公園にいた。昼間あんなにしつこく電話してきた黄泉も、他に用があるのか夜になってから全く連絡を寄越さない。小さな公園に彼女は今、独りきりだった。 (どうかしている。) 二日…

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第8章 暴走

Trrrrrrr… 先程から何度もけたたましく鳴っている携帯の着信を無視し、蔵馬は一人、渋谷の街を歩いていた。 (今日はお前の顔は見たくない。オレに用があるなら直接探して来い。お前の聴覚なら出来るだろ。) 心…

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第7章 消えた封印

翌朝、土曜日。午前十時頃に蔵馬のアパートを訪ねてきたのは凍矢だった。 『何でオレ一人で行かなければならないんだ!!』 『バカ、邪魔しないようにって心配り、何で分からないんだ?』 『アホかっ!!』 そんなやり取りの結果、結…

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第6章 墜落事件

蔵馬が清春の車で家まで辿り着いた三時間後。渋谷の街を、三人の妖怪が歩いていた。かつて暗黒武術会で蔵馬達と出会い、その後彼女と共に黄泉の軍門に下ったこともある男達……陣・凍矢・“美しい魔闘家”鈴木であった。 「ふー、ったく…

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第5章 事件の幕開け

十分後……清春の運転する白い S15 <シルビア> の助手席で、蔵馬は昨夜の鴉の話を思い出していた。 † 『単刀直入に言えば、霊界は“蒼龍妃の首飾り”を持ち出したのは黒鵺だと考えているようだ。』 鴉はブランコ…

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第4章 蒼龍妃の首飾り

翌日。蔵馬は朝からずっと“心ここにあらず”の状態だった。担当教官の都合で急に二限が休講となり、彼女と友人二人は今、構内のカフェテラスで雑談に花を咲かせていた……はずなのだが…… 「……というわけでさ、あれ? ねえ秀、聞い…

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第3章 運命の輪

結局半ば強引に引っ張って行かれた買い物や食事を終え、蔵馬は今家路の途中だった。既に時間は夜の十時を過ぎている……暗い夜道を歩きながら、蔵馬は昼間の出来事を思い出していた (黄泉のヤツ、明日も来るだろうか……?) 一旦断っ…

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第2章 尋ね人

 死せる魂が辿り着く最終地・霊界。正しく生きた者には永遠の安らぎが、曲がった生を歩んだ者には相応の裁きが……などといった人間の勝手な想像は半分しか当たらず、日夜“魂の洗浄と転生”の業務に明け暮れているこの地は、今日もまた…

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第1章 新生活

桜も散り、若葉の緑が眩しいゴールデンウィーク明けの大学。キャンパスは今、新入生とそれを勧誘するサークルの呼び込みでごった返していた。 「水泳部で~す! 全国大会に出て北○康介と酒を飲みましょう!!」 「宇宙はオレ達の夢!…

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