型紙の著作権

[20120602追記]
 この記事未だにポツポツとアクセスがあるのでお断り。「転売が著作物だから著作権法を理由に禁止できるというのは間違いだ」というのがこの記事の趣旨であって、転売禁止条項を販売時の条件として盛り込むのは「契約自由の原則」により認められています (これは近代私法の原則というものらしい)。なのでその条件を飲んで購入した以上、転売は契約違反になるので御注意を!

 2ちゃんねるの某Mスレでリアルタイムで話題になっているのですが、そっちにツッコむのはスレの主旨から逸れるのでこっちで独りつぶやいてみます。前にもチラッとここで書いた「洋服の型紙の転売は是か非か」。「新品はいいけど一度使ったものは私的複製の範囲を超えるのでアウト」的な書き込みがあって疑問に思ったので…。弁理士を目指しながら著作権については半分も理解していない私、ちょっと真剣に悩んでみました (というか、答えが出てないので誰か教えて下さい)。

 えっと、実はそもそも「型紙が著作物なのか」というところが論点だったりします (こちらのサイト参照…プロの意見なので私の意見よりは信憑性が高いかと)。もっともそれでは議論自体成り立たないし、パターン屋さんの「作品」として考えてもいいと (個人的には) 思うので、今回は著作物として話を進めます。それに説明書は文句なしに著作物でしょうね。

 次に、冒頭の2ちゃんの書き込みについては…弁理士試験の口答でうっかりこんなこと言ったら落とされるんじゃないかしら。というのは、型紙から服を作るのは (少なくとも法文上は)「複製」じゃないから。建築の著作物の場合は設計図から建物を造ったら「複製」になるのですが (著作権法2条1項15号ロ)、服の型紙は定義がないので。この辺もし判例があれば知りたいものです。で、もし「複製」に該当する場合でも次に述べる理由で「違法」にはならないはずです。

 その「次」の論点について。「型紙を複製して元の方を売り払ったらどうなるのか」です。これも実は違法じゃありません。今年の弁理士試験の筆記短答問13の枝5に出ました。「買った音楽CDをCD-Rに複製し、その後元のCDを中古CD屋に売り払ったら私的使用の目的外使用となり、複製権の侵害が成立する (要約)」…答えは「×」です (既に正解が発表されているので間違いないです)。著作権法30条第1項柱書ですね。勿論1号 (公衆の使用に供されることを目的として設置されている自動複製機器を用いた複製) および2号 (技術的保護手段を回避した複製を悪意で行う場合) は「私的複製」が認められませんが…型紙というものの性質上、複製する場合は手でやりますよね普通 (PDFでもない限り技術的保護手段も有り得ん)。あ、勿論「コピーの方」は転売できませんよ!! これは明らかに「私的複製」の範囲外になりますから!! 余談ですが30条1項1号の規定に関わらずコピー機での複写は当分「私的複製」として認めてもらえます (但し半分しか一度に複写できない)。

 という訳で、やっぱり著作権法的には型紙の転売を差し止める方法はないような気がするのです。例のカキコにツッコもうかとも思いましたが、そういう議論をする板ではないし何より2ちゃんねるに首突っ込みたくないので止めておきます。これからもオークション利用する人は利用するししない人はしないでしょうし、それに対するパターン屋さんの対応は各お店の人が決めればいいことですしね。ただ弁理士目指している洋裁好きの人間としては看過できない議論だったので掘り下げてみました。というか、誰か正解教えて (笑)。