邂逅 [27-06]
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黄泉の耳や角はレーダーで、音だけじゃなく妖気の異変も察知できるのです(強引)
「おい、勝手に触んな!」
黒鵺が慌てて振り返った。楠樹はしげしげと紅い石を見つめていた。
「何か、妖術でも掛かっているのか?」
「あ? ……ああ、霊力を蓄える術と結界破りだったかな。流石に妖術師には分かるか。」
楠樹はしばらく角度を変えながら眺め、やがて無造作に黒鵺へと突っ返した。黒鵺は顔をしかめながらペンダントを首にかけ直した。
「楠樹、霊界特防隊に何か動きは?」
黄泉が呼び掛けた。楠樹は面倒臭そうに答えた。
「何もない。連中はオレの監視に来てるだけだから何も期待するな。」
「それは事実か? 本館には今いないようだが。」
「知るか。サボってんだろ? こっちだって四六時中張りつかれるのは御免だぜ。」
と、
ジリリリリリ……!!
急に、楠樹のポケットからけたたましい電子音が鳴り出した。
「! 何だ?」
「特防隊の緊急警報だ。だが一体何処で……」
「新館の裏だ。異常な妖気の上昇がある。しかしこの妖気、まさか……蔵馬か!?」
黄泉の聴覚が事態をいち早く察知した。楠樹の顔色が変わった。
「何だと!?」
彼は突如、窓から外へ飛び降りた。只ならぬ様子に黄泉と鴉もすかさず後を追った。
「あ、おい!」
黒鵺が部屋に独り残された。彼は三人を見送りながら、思わず苦い顔でつぶやいた。
「確かに、隠れたままだと色々やりにくいんだよな……。」
楠樹達は新館の裏庭へ辿り着いた。そこには仁王立ちの蔵馬と、その前で腰を抜かしている有瀬ら特防隊の面々の姿があった。
突然、頭上の樹木が一斉に有瀬達へ襲い掛かった。
「くそっ!」
楠樹が紡錘を振り回した。絡め取られた枝は糸に切り裂かれ、地面にばらばらと降り注いだ。蔵馬がゆっくり振り向いた。楠樹は武器を握ったまま、彼女を真直ぐ睨みつけた。
「お前は御頭ではないな?」
「なに!?」
鴉と黄泉が息を飲んだ。有瀬が跳び上がった。
「エッ!? まさかっ……」
「お前が、“蒼龍妃”……!?」
ふっと、蔵馬の口許に笑みが浮かんだ。
ゴオオオオォォォ……!!
突如、蔵馬の身体から白い妖気が燃え上がった。銀の髪がゆらりと宙に浮かんだ。
「う……!!」
その烈しさに皆、身を庇った。蔵馬……否、“蒼龍妃”はちらりと、有瀬達を一瞥した。
「──命拾いしたな、霊界の走狗共よ。」
「!!」
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