桜恋唄
幽遊白書・黒鵺×蔵馬中心、桜枝真央の同人的創作の館

RSS0.91 | RSS2.0 || 桜恋唄 (HOME) » 桜恋唄文芸集 » 邂逅 » 邂逅 [27-05]

邂逅 [27-05]

Contents

contents

躯を見ていると『B'TX』のメタルフェイスを思い出す(マイナーな…)

 第二回魔界統一トーナメント開会七日目の夜。夕方に全二五六ブロックの予選が終了し、明後日からの本戦開始が正式に決定した。組合せ抽選会を明日に控えた選手宿泊施設は、今から緊張している者、普段と変わらぬ者、多々入り乱れてごった返していた。

 そんな中、本館三階のレンタル会議室から十五名ほどの者達が廊下にぞろぞろ姿を現した。それは、例の事件に関し協力を表明している面々だった。彼らは全員の予選が終了したところで秘かに集まり、事件の現状について簡単に集約・周知したところだった。出席者の中に蔵馬や、コエンマへ定時連絡を入れている紫とぼたんの姿はなかった。

「まさか、“蒼龍妃”が蔵馬の中にいるなんて……」
「ああ、しかもとうとう本性を見せやがった。」

 深刻な顔の鈴駒に酎が苦い顔で答えた。隣の凍矢も硬い表情で頷いた。

「前回大会で蔵馬は、桜を媒介として化石化した億年樹を利用した。だが今回は億年樹そのものを蘇らせた。あいつの植物操作能力と蒼龍妃の無尽蔵の妖力の複合技だろう。」
「分かったのは居場所だけじゃないな。オレ達では彼女に歯が立たないということもだ。」

 鈴木の総括に皆すっかり沈黙してしまった。面々は重い足取りで各自の部屋に戻っていった。

 場に残り彼らを見送った黒鵺が、わざとおどけた口調で言った。

「だけどまあ、躯姐さんがピンピンしてたのは不幸中の幸いだな。」
「ああ、流石としか言い様がない。」

 同じく場に留まっている黄泉が苦笑した。

 蔵馬との対戦で重傷を負ったと思われていた躯は、実際は機械化パーツの破損により戦闘不能状態に陥っただけであり、生身の肉体は掠り傷程度だったことが判明した。飛影の報告によると、彼女は本大会にも専属のメカニック担当を連れてきていたので、二日前には既に完治して動き回っていたとのことだった。

「観客にも怪我人が出たって話だよな?」
「巻き添えを食った形だ。A闘技場は補修工事が入っているが、破損が酷くて本戦開始には間に合わないようだ。周りの観客席は明後日までには復旧するらしいがな。」
「そういや、何処ぞにC闘技場をおシャカにしたお兄さんもいたっけ。」
「……」

 黒鵺に冷やかされ、近くに座っていた鴉は軽く彼を睨んだ。鴉と蔵馬のせいで八つの闘技場のうち二つが使用不可能になり、大会の進行は予定を大幅に遅れていた。今頃別室では大会運営委員や各局メディア関係者が集まり、必死にスケジュールを見直していることだろう。

「ま、不測の事態がない限り明後日の本戦開始は決定だな。明日は体力温存しとかないと。」
「そういえばお前、魔界に来てからずっと夢魔の姿のようだが妖力は足りているのか?」
「ああ、兄貴の術で補充してる。明後日に備えてもう一回チャージしてもらうつもりだ。」

 黄泉の問い掛けに黒鵺が答えた。これまでも彼は例のペンダントに霊力を蓄えていた。が、常人と変わらぬ“鈴井清春”の状態では効果が薄く、しかも霊力を妖力に変換する際に損失が出るためろくに用を成さなかった。そこで紫が妖術により、自らの霊気(現在の彼は霊界人である)を弟に分与したのである。

「それを聞いて安心した。オレと当たる前にさっさと敗退されては張り合いがないからな。」
「は、その言葉、この“紫鳥様”がいずれ後悔させてやるぜ。」
「! そうだ黒鵺、お前あのコスプレを本戦でも続けるつもりじゃないだろうな?」

 鴉がはたと顔を上げた。

「あーあれ? 知り合いが原宿でV系御用達の店やっててさ、安く揃えてもらったんだ。」
「そういうことを訊いてるんじゃないっ。」
「仕方ないだろ、半端な変装じゃ蔵馬にバレバレだし、思い切ってハジけないと。」
「既にバレバレだっ! 大体何だ、あの偽名は!」
「あ、やっぱ気づいてた? 兄貴とあんたの名前の合体☆」
「破廉恥キャラに人の名前を使うな!!」
「──いい加減、御頭に正体明かしたらどうなんだ?」

 皆が一斉に振り返った。部屋の隅で黙っていた楠樹が、冷ややかに黒鵺を見つめていた。

「蒼龍妃は既にお前と直接“縁”を繋ぐ必要はない。お前が隠れてると話が面倒でいい迷惑だ。」
「はあ? 何だよ、最初は『御頭が戻ってくる前に消えてもらう』とか言ってたヤツが。」
「うるさい! お前を始末する場所が闘技場の上に変わっただけだ。」
「…… ま、そのうちな。」

 黒鵺は気乗りしない顔で答えた。楠樹が席を立ち、彼に歩み寄った。

「本当は、己の間抜けが恥ずかしくて顔を出せないだけだろう?」
「あぁ!?」
「こんな安物拾いに戻って罠を踏むなんて、伝説の盗賊が聞いて呆れるぜ。」

 楠樹はいつの間にか黒鵺の背後に立ち、鮮やかな手並みでペンダントを掏り取った。

2012-10-01 21:04

||

コメント

まだコメントはありません。

このアイテムは閲覧専用です。コメントの投稿、投票はできません。

桜恋唄について | 管理人について | サークル情報 | サイトマップ