桜恋唄
幽遊白書・黒鵺×蔵馬中心、桜枝真央の同人的創作の館

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邂逅 [26-09]

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硝安や柳香はこれまでも何度も出番があるんですが、顔決めてないや

『先生、』

 永遠が低い声で呼びかけた。

『妾は、今の時を限りに那由他との想い出を忘れることに致します。そのことをお許し頂けますか。』
『……』

 翡翠は一瞬言葉に詰まった。言いたいことが幾つもあったが、永遠の声にはそれを言わせないような静かな力があった。

『許すも何も……死んだ者よりも生きている者が幸福でなければ。きっと弟も貴女の幸せを第一に願っているでしょう。』

 他に何とも言い様がなく、彼はただそう答えた。
 その時、

『失礼致します。近衛隊の硝安でございます。翡翠様がこちらの部屋においでと伺って参りました。』

 扉を叩く音がして、三人が顔を見合わせた。

『私に何か用か?』
『西方軍の第一諜報部隊が、国王軍に協力したいという妖術師を連れて戻って参りました。翡翠様にお目通りを願っております。』
『! 分かった、すぐ行く。』
『待て、私も行こう。日を改めて挨拶させるのは二度手間になるからな。』

 燐が口を挟んだ。

『承知致しました、それでは謁見の間に案内しておきます。』
『妾も参ります。上衣を取ってまいりますね。』

 永遠はそう断って奥の部屋へ向かい、室内着の上にローブを羽織り戻ってきた。それを待って三人は同時に部屋を出た。長い廊下を歩き、彼らは謁見の間へと辿り着いた。
 空間の中央、紫紺の絨毯の上に一人の男がひざまずいていた。燐が玉座に腰をおろした。永遠がその右後ろに立った。
 翡翠は二人に距離を置いて立ち、訪問者を一瞥した。長身で髪の黒い男だった。伏せた顔を窺うことは出来なかったが、その背には黒い蝙蝠の翼が生えている。

(……?)

 それを目にした途端、翡翠は不可解な胸騒ぎを覚えた。

『顔を上げよ。まずはそなたの名前を聞かせてくれ。』

 燐に促され、男がゆっくり顔を上げた。
 刹那、翡翠の身体を衝撃が走った。

『!!……』

 呆然と彼は、こわばった表情で男を見つめた。

 ──似ている──

 翡翠は咄嗟に、燐に悟られぬよう目だけ動かし永遠を見やった。彼女もまた、目を見開いたままその場に凍りついていた。白い顔は彼同様、一際血の気を失っていた。それを見て翡翠は、脳裡を掠めた直感が思い過ごしでないことを確信した。

『須臾と申します。』

 男は静かな声で名乗り、再び深々と頭を垂れた。

(そんな……)

 ──お前が何故、この今に?──

 心臓が激しく波打ち、喉がひどく渇いてきた。永遠は夫の玉座に手を掛けていた。その手には不自然な程の力がかかり、肩は小刻みに震えていた。
 三人の前にひざまずいている男は、那由他だった。

2012-01-05 21:08

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