桜恋唄
幽遊白書・黒鵺×蔵馬中心、桜枝真央の同人的創作の館

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邂逅 [26-06]

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てか魔界の住人って馬鹿力で鍵すぐ壊せそうだよな…

「兄貴!」

 部屋の入口に立っていたのは紫だった。

「鍵かけ忘れてるぞ。このボロ部屋、自動ロックじゃないみたいだぜ。」
「あーありがと。でもこんなショボい鍵、あってもなくても同じだろ?」
「あのな黒鵺、ピッキングは誰にでも出来る芸当じゃねーから。」

 苦笑しながら紫はベッドの端に腰を下ろした。鴉が尋ねた。

「それで、寝場所は確保できたのか?」
「おう、黄泉の息子がいるだろ? あの坊主が『こんな部屋嫌だ』って喚いてたから『ならオレに譲ってくれ』って、めでたく交渉成立。あいつはちゃっかりパパの部屋に移った。」

 前回大会予選では黄泉が決勝トーナメントに進んだ一方、彼と同組の修羅は敗退となった。そのせいで父は新館特別室、息子は本館と宿が分かれていたのである。

「まあ、黄泉の方は少々御機嫌斜めだったぜ。折角お前ら邪魔なメンツが皆こっちに押し込められてんのに、ガキがいたら“抜け駆け”も出来ないしさ。」
「それはお手柄。弟思いの兄貴に感謝だな。」

 笑いながら鴉は黒鵺を振り返った。しかし黒鵺は、上の空で窓の外を眺めていた。

「どうした?」
「蒼龍妃の首飾りは今、何処にあるのかな。」
「なに?」

 唐突な言葉に、鴉と紫は瞬いた。

「以前コエンマに頼まれて飛影が探していたそうだが、結局それきりだな。」
「まだ蒼龍妃が持ってるんじゃないのか。でも何で?」

 黒鵺は無言のまま再びブラインドを下げた。紫の隣に腰を下ろし、彼は一つ息をついた。

「さっき、こっち来る前に須臾という男に会ったんだ。」
「須臾? 何者だ?」
「よく分からない。オレと同じ顔してて、最初は那由他かと思ったんだけど。」
「何だって!?」

 二人が思わず身を乗り出した。

「蒼龍妃と同じく残留思念の塊みたいな奴で、『長く姿を見せると力を使い果たすから』って殆ど何も喋らず消えてしまった。でもそいつが言ったんだ、『首飾りが必要だ』って。」
「!……」

 黒鵺は机に手を伸ばし、持ち込んだ荷物から小さな革のがま口を取り上げた。口金を開くと、大事そうにガーゼに包まれた何かが入っていた。
 彼は包みを開いた。光を受けて透明な石が一瞬、壁に虹を映した。蒼龍妃の解放と共に本体を離れ、鈴井清春がそれとは知らず所有していた、あの首飾りのダイヤモンドだった。

『──えっ!?』

 王の私室。燐に誘われ夕食の席を共にした後、バルコニーで夜風に当たっていた翡翠が驚いて振り返った。

『隠さずともよい。そなたと永遠が親しい仲であることはとうに気づいている。』

 手にした錫の杯を傍らに置き、燐が言った。
 翡翠が蒼龍国に逃れてから一年と三月が経過していた。革命軍が圧倒的優位だった戦況は、年が変わってから徐々に国王軍優勢の相を成し始めていた。翡翠の指揮指導と諜報部隊による妖術師の引抜き工作、そして何より、あの日を境に戦線に立つようになった永遠の功績が大きかった。彼らは先日も九十七層の領土奪回作戦を成功裡に終え、物資補給と休息のために一時帰郷している最中だった。

2012-01-05 20:57

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