桜恋唄
幽遊白書・黒鵺×蔵馬中心、桜枝真央の同人的創作の館

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邂逅 [26-05]

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麗奉史書ってこの後出番あるのかなぁ… (こら

「霊界目線で書かれた他の歴史書はどれも、永遠が夫・硫を暗殺してその後五百年魔界を支配したことになっている。だけど麗奉史書にははっきりと、硫の第二王子・燐が父王を暗殺し、継母の永遠を正妃に迎えて即位したと書かれてた。」
「そうか。」
「魔界史学的には大発見なんだぜ? 燐はいわば新発見の登場人物なんだから。」

 反応の薄さに黒鵺が苦笑した。鴉は変わらず醒めた目を彼に向けた。

「では、その兄の汞は?」
「存在は前から知られてたけど役回りは随分違うな。定説では父親が殺された際に命からがら脱出し、蒼龍妃滅亡後に霊界の協力を得て魔界の復興に尽力したってことになってる。要するにあんたが知らないくらい、扱いが地味ってこと。」
「蒼龍妃が人間界へ侵略を目論んだため、霊界が討伐に乗り出したというのがこれまでの魔界史の共通見解だったな。そうすると汞は、霊界と手を組んで永遠に敵対したと?」
「んー、それはまだ読んでない。」

 黒鵺は肩をすくめた。

「霊界が魔界と戦争になったのは事実みたいだぜ。でも汞がその間、何処で何してたかは謎とされてきたんだ。これまで伝わっていた歴史では二人の王子について殆ど記述がない。当然、戦争の発端となった蒼龍家の兄弟喧嘩もなかったことにされていた。」
「その理由は?」
「勿論、霊界にとって都合が悪かったからだろ。」

 黒鵺は「分かってるくせに」と言わんばかりに笑った。

「真相はきっとあんたの夢の通り、霊界が魔界侵略を目論み、燐と汞の兄弟対立に乗じて攻め込んだんだ。だけど結局は負け戦に終わった。そこで霊界は仕方なく、自分達は人間界を守る為に魔界へ派兵し、汞の王位奪還に協力したんだと……そんな体のいい幕引きをでっち上げたんじゃないかな。」
「なるほど。それに最後まで抵抗した永遠が“諸悪の根源”扱いされて現在に至ると、大方そんなところか。」

 黒鵺はうなずき、ボストンバックのファスナーを閉めた。当座必要な日用品を机上に並べ、彼は再び口を開いた。

「でも、まだ不可解な点が残ってる。あんたは何故、燐が歴史から消されたんだと思う?」
「なに?」

 黒鵺は窓に近づきブラインドを上げた。こちら古びた本館とは対照的な、真新しく煌びやかな新館が向かい合っている。鴉は恨めしげにそれを睨んだ。

「別にわざわざ永遠を悪者に据えなくても、その役目を燐にさせれば済む話だと思わないか。存在自体隠されてきたのは他に理由があるんじゃないかなって。」

 そう言いながら彼は、ちらりと窓の下を窺った。

「燐があの坊主と同じ顔だったと聞くと、余計そんな気がする。」

 鴉も窓に近寄った。ホテルの中庭、木の陰に楠樹が立っている。揃いのコスチュームに身を固めた男女が四名、彼を囲んでいる。

「誰だあいつら、あんた知ってる?」
「楠樹の右の男は霊界特防隊の有瀬だ。となれば、他の連中も特防隊の隊員だろう。」
「御苦労なこった、魔界までわざわざ何しに来たんだか。」

 一同は、二言三言交わし四方へ散っていった。独り残された楠樹も、黒鵺達が今いる本館の中へ消えていった。

「確かに、あの連中は蒼龍妃を魔界で捕らえるつもりはないはずだな。」

 鴉が口を開いた。

「妖怪に対する人間の感情悪化を目論むなら、人間界で暴れてもらわなければ困るだろう。」
「監視要員じゃないか? 楠樹を除いて戦力的にはお飾りだろ。」
「もしくは、万一蒼龍妃が暴走したら例の巨大結界を再稼動する役……とか。」

 会話に突如割り込まれ、二人はハッと振り返った。

2012-01-05 20:54

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