桜恋唄
幽遊白書・黒鵺×蔵馬中心、桜枝真央の同人的創作の館

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邂逅 [26-04]

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リゾートホテルは書けませんがビジネスホテルなら得意です (笑)

 同じ頃。大会参加者やその応援者達で賑わう魔界トーナメント会場傍の宿泊施設。巨大なリゾートホテルの廊下を、周囲を見回しながら歩く男がいた。嵩張るボストンバッグを肩にかけ、人一人くらい隠せそうな巨大サイズのスーツケースを引いた清春……ではなく、夢魔の姿に戻った黒鵺だった。

(用心しなくても蔵馬はまだ来てない筈だけど……それにあいつは新館だよな?)

 大会参加選手には運営本部が手配した宿泊施設が用意されているが、中でも前回決勝トーナメント進出者には特別ルームが提供されていて、黒鵺らのような初参加組とは建物自体が異なっていた。
 何とか誰にも鉢合わせず七階の部屋に辿り着き、部屋番号が刻印されたキーホルダーつきの鍵で室内に入った。途端、

(げーっ、マジ……!?)

 黒鵺は思わず天井を仰いだ。奥行の狭い机と小さなテレビ、一応ダブル幅だが縦のやや短いベッドが、お世辞にも広いとは言えない室内に鎮座している。リゾートホテルという言葉の響きからは程遠い、格安ビジネスホテル並みの内装だった。
 気を取り直して荷物を置き、履いてきた靴を備品のスリッパに履き替えたところで、誰かがドアを叩いた。覗き穴から訪問者を確認し、黒鵺は思わずにんまり笑った。

「やあ、昔の兄貴。」
「その呼び方はやめろっ。」

 開けたドアから苦い顔で入ってきたのは、紫ではなく鴉だった。

「ナイスタイミング、今来たばっかだぜ。どうして部屋が判った?」
「何のことはない。さっきお前がチェックインしている時、私達もロビーにいたんだ。」
「なーんだ、例の超能力〈シックスセンス〉かと思ったのにがっかり。」

 首をすくめた黒鵺を鴉は呆れ顔で睨んだ。

「『私達』ってことは兄貴と一緒に来たんだよな。兄貴は何処に泊まってんの?」
「それがあの馬鹿、この期に及んで宿の予約をしていなかったらしい。今頃必死になって電話かけまくっている筈だ。」
「えーっ、何処も空いてないだろ! 何でそんな無茶を?」
「お前や私の部屋を当てにしていたらしいが、この狭さで諦めたようだ。ったく、予め知っていたら自腹でもっとマシな宿を借りたのに。」

 文句を言いながら鴉は机の前の椅子に腰を下ろした。と、彼は黒鵺の荷物に目を留めた。

「何だそのデカい鞄は。夜逃げでもしてきたのか?」
「戦闘服だっつーの。決勝まで予定があると荷物が多くて大変だぜ。」
「……楽天的で羨ましい限りだ。」

 鴉が顔をしかめた。黒鵺は澄まし顔で荷解きを始めた。ボストンバッグからノートパソコンが出てきたところで、鴉が声をかけた。

「そういえば、麗奉史書の解読は進んでるか?」
「え? ああ、それが思った以上に進まなくてさ……」

 黒鵺はばつが悪そうに頭を掻いた。『麗奉史書』はひと月半前、古代魔界史の研究者である鈴井清春の元へ持ち込まれた魔界の歴史書である。

「本じゃなくて鉛版だからページが多々抜けてるし、しかも他の文献の古代魔界語と随分違うんだよな。知識と想像力を総動員させて頑張ってるところ。」
「何か新しく判ったことは?」
「あんたが夢で見知ったこと以外はまだ何も。でも、書かれてることは今まで定説とされてきた歴史とかなり違ってる。異端さにかけては魔界版『ユダの福音書』ってとこかな。」
「内容の特殊性はどうでもいい。」

 黒鵺は得意げにマニアックな喩えを持ち出したが、鴉は冷淡に遮った。どうやら彼は園芸と同じくらい、歴史にも関心が薄いようだった。

「私が見た過去が真実なのか確認したいだけだ。誰かが偽の記憶を見せて、私をミスリーディングしようとしている可能性もなくはないからな。」
「それはないと思う。まだあまり読めてないけど、あんたの夢とは矛盾してない。」

 黒鵺は首を振った。

2012-01-05 20:51

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