桜恋唄
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Found It - 第8章 目覚め [3]

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夢魔は竜魔の母方の従弟で特殊能力持ちの多い家系という設定

 微かな寝息が続いている。夢魔が立ち上がった。

「そろそろ点滴を準備するか。長期戦になるかもしれないからな。」
「その前に、総帥に現状を報告してこい。後は私がやる。」
「なに? ……お前が?」

 夢魔は一瞬目を丸くし、にやりと笑った。

「おやおや、項羽の天敵が一体どういう風の吹き回しだか。」

 私は答えなかった。

「ふ……ん。それならじゃあ、頼んだぜ。」

 夢魔は軽く手を振り出て行った。戸が閉まると同時に、私は項羽の枕元に腰を下ろした。額や頬は絆創膏だらけ、布団から覗く手には包帯が巻かれている。しかし重篤な火傷ではなさそうで安堵した。髪を焦がしてしまった分、私の方が見た目はよっぽど悲惨だ。

(本当に情けないヤツ。何も知らないで……気持ちよさそうに眠って。)

 総司の言葉を思い出し、次第に笑いが込み上げてきた。私はそっと身を屈め、一段声を落として彼にささやきかけた。

「こら、いつになったら起きるつもりだ? 私、お前の秘密判ったぞ。」

 勿論、項羽は応えなかった。それでも話を聞いてほしくて、私は彼の手を取った。一回り大きな手の平を、私は両の手でそっと包み込んだ。

「……待っていたんだろう? 来年の十二月、十八になる日を。私を嫁にして、三十になるまでに子供を十人。あまりに馬鹿らしくて取り合うことも出来なかったが、お前は本気だったんだな。」

 眠る項羽に穏やかに語りかける。胸に切なく、満ち足りた想いが涌き上がっていた。ぼんやりと曖昧だった心が、言葉にする毎にくっきり形を成していくような気がした。

「項羽……私との約束は、お前にとってそんなに軽いものだったのか。恐怖で、嫌悪で心の奥に沈んで消えてしまうような、その程度のものだったのか。私ずっと待ってたのに、お前はいつまで焦らすつもりなんだ……?」

 項羽の手は温かかった。手の平から規則正しい脈動が伝わってくる。彼は生きているのだ。たとえ心が壊れても、何一つ思い出せなくても、項羽は今ここにいる。

 ──私達の約束は、まだ生きている──

 私は重ねた手に、そっと力を込めた。
 と……

「!?」

 その手を握り返され、私は飛び上がった。

「……こいつは夢ですかね…… あの霧風様が、オレの枕元に付きっきりだなんて……。」

 項羽の目がゆっくり開いた。

「項羽!? お前っ……」
「ああ、全部解るよ。自分が誰でどんなヤツで、どんな女を好きだったかも。」
「!!……」

2009-06-14 09:00

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