桜恋唄
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Found It - 第8章 目覚め [1]

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姐御にかかれば風魔の男共など皆頼りないだろうね… (柳生暗殺帖ネタ

 夜。私は男達が雨避けしている寺屋を訪れていた。たまたま油の在庫が少なかったことが幸いし、火災は日が暮れる前に鎮火した。しかし室内は未だ重苦しい空気に包まれていた。

「項羽の傷は深くはない。しかし眠り続けたままだ。」

 竜魔が腕組みしながら言った。

「火災に接して精神を損傷した可能性がある。そもそも火に巻かれた時、あいつの身体能力からして脱出できない筈はなかった。逃げられなかったのは周囲を炎に囲まれ、錯乱状態に陥った挙句に昏倒したからだろう。」
「もっとも、早くに意識を飛ばしたお陰で煙を吸わずに済んだようだがな。」

 私と共に来た総司が言い添えた。竜魔はちらりと彼女を見て、それから一同を見渡した。

「とにかく今はそういう状況だ。それ以上は何も分からん。」
「今、どうしてるんだ?」

 小次郎が不安げに尋ねた。

「夢魔がずっと付き添っている。意識を呼び戻せるか試してみると言っていたが……あまり期待はしない方がいい。」

 しばらく沈黙が流れた。やがて、劉鵬が腰を上げた。それをきっかけに皆もめいめい動き出した。これ以上ただ集まっていても事態が変わらないことは明白だった。しかし小龍だけはその場に座り込んだままだった。と、総司が近寄り肩を叩いた。

「心配しなさんな。お兄ちゃんは別に死んだ訳じゃないんだからさ。」

 小龍はようやく顔を上げ、小声で「有難う」とつぶやいた。彼が立ち上がり出て行くのを見送り、総司は私を振り返った。

「……酷いな、折角の美人が台無しだ。髪も随分短くなったじゃないか。」
「別に、これぐらい何でもないさ。」
「ったく風魔の男共は情けない。自分達は何もしないで女の子こんなボロボロにして。」

 私は肩をすくめた。総司がくすりと笑った。

「さて、私はそろそろ行くとするよ。急の案件が入ったんでね。」
「! 帰るのか?」
「坊やは気懸りだが私にはこれ以上何も出来ないから。……彼、早く元に戻るといいな。」
「……」

 小さく頷くと、総司は微笑して部屋を後にした。

 道場に戻り姉妹達に状況を説明した後、私は物置の中で例の手帳と向き合っていた。記憶どころか意識の回復すら危ぶまれる項羽の状態だが、何もせずじっとしていることは到底出来なかった。しかし、

(やはり、これ以上は何も……)

 再度確かめても手帳には二つの数字以外、何の書き込みも残されていなかった。小龍に許可を得て、項羽が鉄の部屋から持ち出した日めくりカレンダーも借りてきた。しかし、残ったふた月半のページには一切の手掛かりが存在しなかった。しかし諦め切れず、私は双方の十二月の日付に再度目を凝らした。と、

「霧風、こんなところにいたの。」

 扉が開き、凪が姿を現した。

「ちょっと手伝ってくれない? あんたが救出した項羽のアルバム、中身ずぶ濡れになったから乾かしてやろうと思ってさ。」

 彼女の手に洗濯ロープと、アルバムから出した写真の束が握られていた。私は立ち上がり、彼女と共に写真を一枚一枚洗濯ばさみに吊るし始めた。項羽と小龍の成長記録が年代順に並び、私はそれを妙にくすぐったい気分で眺めた。

「あら何、そのカレンダー。」

 凪がふと、あの日めくりに目を留めた。

2009-06-14 09:00

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