桜恋唄
幽遊白書・黒鵺×蔵馬中心、桜枝真央の同人的創作の館

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Found It - 第5章 会いたい [4]

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うちの霧風はよく泣いてるなぁ…そんな性格じゃない筈なのに

 露骨な警戒にもひるまず、彼は真正面から私に向き合った。

「オレを避けてるよね。どうして?」

 私は立ち上がった。が、すかさず肩を掴まれた。

「皆がオレに言うんだ。オレと君は仲が悪くて顔を合わせる度に衝突していたって。」

 私は振り返り、項羽を睨んだ。

「でも小龍だけは違うことを言う。皆の言うことは事実だけど、それがオレと君の会話だったと。君こそオレの一番の理解者で、オレが記憶を失くして一番傷ついているのは君なんだって。教えてほしいんだ、君にとってオレは何なの。オレ達は本当はどんな関係……」
「止めろ!」

 耐えられなくなり、とうとう私は叫んだ。

「項羽は私を『君』とは呼ばない!!」
「!」

 瞬間、私達の視線が宙で衝突した。

(あ……)
 ──しまった──

 項羽の顔がこわばっている。それを見て私は、自分が彼の心を深く抉ってしまったことに気づいた。

「…… 悪かった。」

 項垂れ、それだけ口にするのがやっとだった。

「……御免。」

 項羽もそう言って頭を下げた。そして背を向け、坂を駆け下りていった。私はふらりとその場に座り込んだ。

(私、何をしているんだ……)

 全身が重かった。打ちのめされ、鉋を引く力さえ残っていなかった。苛立ちを項羽にぶつけてもどうにもならないと、頭では解っている。彼自身が誰よりも苦しんでいて、記憶を取り戻すのに必死なのは知っている。しかし……

 ──君にとってオレは何なの──

 それは、私こそ彼に訊きたかったこと。彼にとって私は一体何だったのだろう。あの告白が本気なら何故、こうも簡単に忘れることが出来るのか。

(どうして、私を忘れてしまったの……。)

 視界が急にじわりとぼやけた。目を伏せると睫の端から一筋、涙がこぼれ落ちた。ようやく悟った。私が何故、今の項羽を拒絶し続けていたのか。私の存在、あの約束を憶えていない彼を“項羽”と認めるのが辛かったから。今の彼を認めてしまうと、かつての彼を永久に喪うような気がしていたから。

「項羽……」

 鉋にかけた手の甲に、二粒、三粒と涙が落ちた。私に「愛してる」と言ってくれた、あの項羽が消えてから初めて、私は泣いた。声は殺せても、こぼれる滴は止められなかった。

 ──会いたい──

 会いたい。叶うならもう一度、私にあの言葉を聞かせてほしい。あの約束を果たす為に、私の元へ帰ってきてほしい。

2009-06-14 09:00

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