桜恋唄
幽遊白書・黒鵺×蔵馬中心、桜枝真央の同人的創作の館

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Found It - 第5章 会いたい [3]

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台詞回しとは対照的に妙に間抜けな光景

「でも凪達のアイディアは悪くないな。その彼女が項羽の想いを受け止めて、あいつのこと本気で心配してくれたら何か変わる気がする。」
「私は、そうは思わないが。」

 すかさず私は遮った。小龍の動きが止まった。

「その女が誰だろうが、項羽の回復を心底願おうが、あの男には届かないさ。」
「何故?」

 小龍がじっと私を見つめた。私の胸に得体の知れない、澱んだ感情が広がっていた。自分の手元へ視線を落とし、私は冷ややかに答えた。

「……どうせ忘れられてしまう、その程度の女だったのだから。」

 その後しばらく沈黙が続いた。私は重苦しい気分のまま、再び材木を削り始めた。と、

「霧風、」

 小龍が口を開いた。穏やかだが、まるで私を諭すような声だった。思わず顔を上げると彼は、ただ憐れむような醒めた目でこちらを見つめていた。

「何だっ。」

 たじろいで訊き返した。彼はふっと視線を落とし、乾いた声で答えた。

「項羽が好きだったの、お前なんだぜ。」
「なに?」

 その時、

「おい小龍、出来上がった分持ってきてくれ!」

 兜丸が遠くで声を張り上げた。小龍は「すぐ行く」と答え、台車をがらがら引きずっていった。人の気配が消え、辺りは途端に静かになった。

「……」

 私は何故か力が抜けて、鉋に手をかけたままぼんやり座り込んでいた。先程感じた棘とは別の、重苦しい何かが心に圧し掛かっていた。

 ──あいつ、本気だったのか──

 半信半疑で心に留まっていた項羽の告白。今頃他人からその真偽を聞かされるとは思わなかった。しかし、それが一体何だと言うのだろう。今となってはあの男自身が何も憶えていないというのに。
 ……その時、

「おはよう、やっぱりここにいたんだ。」
「!」

 心臓が止まらんばかりに驚いて、私ははっと振り返った。あろうことか、私を見下ろしていたのは項羽だった。

「やっと捕まえた。君はいつも、オレを見ると逃げ出すから。」
「……」

2009-06-14 09:00

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