桜恋唄
幽遊白書・黒鵺×蔵馬中心、桜枝真央の同人的創作の館

RSS0.91 | RSS2.0 || 桜恋唄 (HOME) » 桜恋唄文芸集 » Our Promise Still Holds » Found It - 第5章 会いたい [1]

Found It - 第5章 会いたい [1]

Contents

contents

霧風に喋らせると簡単な話も難しく聞こえるという

「おはよう小龍。どうだ項羽の様子は?」

 翌朝。本陣建設現場を訪れた私は、隅で柱を削っている小龍に声をかけた。

「ああおはよう霧風。昨夜は特に何もなかったよ。『折角オレの為に集まってくれたのに御免』って、皆に頭下げて回ってたけど。」
「今何してる?」
「倉庫にいるよ。今日から工事を手伝うって。」
「そうか、普段通りなら別にいい。」

 私も近くに腰を下ろし、床板の鉋がけを始めた。

「霧風お前さ、」

 小龍が口を開いた。

「昨日こっちで大ブーイングだったぜ。項羽のこと『足手まとい』と言い放ったって?」
「……」

 私は無言で木材を削り続けた。小龍はくすくす笑っていた。

「皆何にも分かってないよな。オレの次にあいつと過ごした時間の長いヤツが、今の事態に傷ついてない訳ないのに。」
「そんな殊勝な理由じゃない。項羽は半年前に死んだ、私はそう思ってるだけだ。」
「それだって昔の項羽が好きだったからだろ。あ、いや、別にそういう意味じゃなくて。」

 思わず睨みつけた私に、小龍は慌てて首を振った。

「……昨日総司が言っていたのだが、」
「ん?」
「項羽の記憶を封じているのは、過去の生活に戻りたくないという無意識の拒絶感に違いない。だからその否定的感情を超える、記憶を取り戻す意義をあいつに悟らせることが最良の治療になる。」
「!」

 私はちらりと小龍を見て、再び視線を手元に戻した。

「だが私は、無理に思い出させる必要はないと思ってる。昨日のことでますますその思いを強くした。眠らせておきたい記憶なら一生眠らせておけばいい。項羽はもう死んだんだ。私達がそう諦めれば、あいつをこれ以上追い詰めずに済む。」
「……」

 小龍は鉋がけの手を止め、虚ろにふっと視線を落とした。
 と、

「あぁいた、小龍おはよう!」

 私達は顔を上げた。すぐ傍に凪とつららが立っていた。

「あら霧風、あんたもここにいたの? お疲れ様。」
「オレに何か用?」
「うん、項羽のことで話があるんだけど。」

 小龍は遠慮したのか、私にちらりと視線を向けた。私は「お構いなく」と首を振り、再び黙々と鉋がけを始めた。

「あいつのことならあんたが一番知ってるだろうしさ。ちょっと訊きたいことがあって。」

 凪がそう言ってつららの肩を叩いた。つららは促され、伏し目がちに切り出した。

「あの……本当は口止めされてたんだけどこんな事態だから話すね。小龍は、項羽の彼女が誰か知ってる?」
「!」

2009-06-14 09:00

||

コメント

まだコメントはありません。

このアイテムは閲覧専用です。コメントの投稿、投票はできません。

桜恋唄について | 管理人について | サークル情報 | サイトマップ