桜恋唄
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Found It - 第4章 知らない男 [5]

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竜魔と総司の真の関係は皆様御自由に御想像下さい (笑)

「信じられない。項羽のヤツ、本当に元に戻れるのかな。」
「悲しいよね。あんなに強くてカッコ良かった項羽が、蝋燭一本でパニックになっちゃうなんて。」

 夜になり、私達は板間に引いた寝床の上で就寝前の時間を過ごしていた。凪とつららの会話を傍らで聞き流しながら、私は重苦しい気分で押し黙っていた。

 ──全く、どうしようもない──

 項羽は夕食の時間には平静に戻っていたが、皆の態度は腫れ物に触るように一変していた。たまたま今まで調理場に立ち寄ることもなく行灯の裸火を目にすることもなかった彼だが、皆は今後一層彼から火を遠ざけようと細心の注意を払っていた。その不自然さがますます場の空気を重いものにしていて、私はいたたまれず夕飯の半分を残して逃げ出してしまった。

(どうして皆分からないんだ。項羽は既に死んだ、それでいいじゃないか。)

 そんな私の思いは一層強くなってしまった。帰ってきたのは私の知らない男。よそよそしい笑顔も腑抜けた様も、全てが私の心を波立たせる。

 ──もう、いい加減にしてくれ──

 何もかもうんざりして頭から布団をかぶった、その時。

「御歓談のところ失礼、もう一人入るスペースはあるかな?」

 突然、頭上から声がして私達は顔を上げた。布団と枕を脇に抱えた伊達総司が立っていた。

「ど、どうぞっ! ここ空いてますから!」

 凪が慌てて起き上がり、散乱していた荷物を横へと退けた。総司は「少し様子を見たい」としばらく里に滞在することを決めたらしい。

「有難う。竜魔のテントに入れてもらおうと思ったら物凄い剣幕で追い出されてね。」

 冗談とも本気ともつかぬ笑顔で彼女はそう言った。凪とつららがわっと沸き立つ横で、私は冷静に尋ねた。

「項羽の今の状態、聞いたか?」
「ああ。周囲の努力も空回り、仲間の催眠療法も功を奏していないそうだな。」

 布団を敷きながら総司が答えた。つららがおずおず尋ねた。

「あの、もしかして脳にダメージを受けているとか……」
「それはないよ。入院中に何度もMRIを撮ってる。」

 首を振り、総司は布団に潜り込んだ。

「それについて、今日の一件で思い当たったんだが。」

 私が切り出した。

「もしかして項羽は、“恐怖”のために自ら記憶を封じているんじゃないのか?」
「なに?」

 総司が顔を上げた。凪とつららも私の顔を見つめた。

「精神的負荷が記憶喪失の引き金となる例は多いと聞く。極限状態の体験は、一切の記憶を消し去るほどの心的外傷になり得ないか。」

2009-06-14 09:00

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