桜恋唄
幽遊白書・黒鵺×蔵馬中心、桜枝真央の同人的創作の館

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Found It - 第3章 桜の下にて [3]

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これ書いてた頃に ON/OFF が出してたシングル「花篝」がヒントです。

 ──年年歳歳花相似たり、歳歳年年人同じからず──

 漢詩の一節がふと、頭を過ぎった。

(結局、竜魔が一番正しかったんだな。)

 奇妙なおかしさがこみ上げ、私は乾いた微笑を浮かべた。桜の花は今年も変わらず咲き誇り、それを眺めていた私達の方が変わってしまった。

(この樹はただ、生きているだけ。)

 私は再び花を見上げた。春が巡れば花が咲き、いずれ緑の葉が生い茂る。それは生物としての桜の本能。美しいだの醜いだの、それは人間の勝手な主観に過ぎない。しかし、

 ──生きていればいいというものではない──

 そんな思いが頭を掠め、私は顔を曇らせた。
 と、

 かさっ

「!」

 人の足音を聞きつけ、私は顔をこわばらせた。項羽と小龍がこちら目がけて歩いてくる。私は何故か、咄嗟に木立に身を隠した。

「綺麗だろ? 父さんと母さんが生きてた頃は四人で花見もしたんだぜ。相当昔だからオレもよく憶えてないけどな。」

 前を歩いてきた方が語り掛けた。後ろの男は無言のまま、じっと花を見上げていた。そして悲しげに項垂れ首を振った。

「……御免、分からない。」
「焦ることはないよ。オレはお前にこの花を見せたかっただけだから。」

 小龍はそう言って微笑んだが、項羽は曇った表情のまま再び桜を見上げた。

「オレ、」
「ん。」
「本当に、ずっとここに居ていいの。」

 小龍が項羽の顔を覗き込んだ。項羽は虚ろな眼差しで花の群れを見つめていた。

「どういう意味。」
「だって、何を見てもよそよそしいし、皆も優しいけど他人行儀で……」
「憶えてないんだから当たり前だろ。皆だって、前のお前を知ってるから少し調子狂ってるだけ。」
「あの……本当にオレ、ここの人間なの。」
「あのな、」

 小龍が兄の正面に回り込んだ。そして彼の左手を取り、自分の頬に宛がった。

「疑う余地が何処にある? オレの顔が何よりの証拠だ。」

 そのまま彼の肩に手を置いて、小龍は言い聞かせるようにささやいた。

「いいか項羽、お前が何も思い出せなくてもオレとだけは絶対に繋がってる。オレはいつまでもお前の弟、それは何があっても変わらないだろ。」
「……」
「だから、何も心配するな。」

 小龍が微笑んだ。項羽はしばらく彼の顔を見つめ、小さくうなずいた。ひらひらと一片、花びらが二人の間に舞い落ちた。それを合図に重なった影は再び二つに分かれた。と……

「!」

 顔を上げた小龍が、木陰に立つ私に気づいた。項羽も振り返った。私は思わず身構えた。

2009-06-14 09:00

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