桜恋唄
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Found It - 第3章 桜の下にて [2]

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「ソメイヨシノは散り際が汚い」は作者自身の所感

 一年前の春の宵。私と項羽、そして竜魔の三人は、夜警の持ち場に向かう途中この木の下で足を止めた。

『見事に咲きましたなぁ、今年も。』

 おどけた口調で項羽が言い、そのまま私を振り返った。

『夜の桜って綺麗過ぎて何だか寒気がするよな。「桜の樹の下には屍体が埋まっている!」は坂口安吾だっけ? 文学少女さん。』
『梶井基次郎だ。坂口安吾は「桜の森の満開の下」。』
『やっばい、近代文学史は赤点だなオレ。』
『……』

 その瞬間、私はうっかり返事したことを後悔した。項羽は多分わざと間違えたのだろう。端から正解を言うと私に無視されることを知っているのだ。

『染井吉野は好きじゃない。』

 苦々しげに私はつぶやいた。

『咲いている時はともかく散り際が見苦しい。散った花片は地面で腐り、枝に残るのは萼と気の早い葉だけだ。』
『そうか? オレはそうは思わないけど。』

 すかさず項羽が異議を唱えた。

『染井吉野が特別汚い訳じゃない。死はどのみち醜くて目を背けるべきものさ。』
『同じ死ぬでも死に方を選ぶ余地はある。花も、そして私達も。』
『死に方の美醜で好き嫌い言われたらかなわないぜ。花だろうが人間だろうが死に至る過程、死んだ後の姿、生きてる間に精一杯綺麗に咲けたならそんなもの大した意味はない。』
『私は無様な最期は御免だ。死ぬ為に生まれた私達なのだから、その瞬間にこの樹のような醜態を晒したくない。』
『今から死ぬ時のこと考えてどうすんだよ。それより一日でも長く生きて一つでも多くの任務こなすこと考える方がよっぽど前向きじゃないのか?』

 大した意味もないのに次第に熱を帯びてくる応酬。最初に好き放題の意見を提示し、私は深追いせず項羽がしつこく突っ込んでくる。だが私が適当な態度を取るのは、その方が彼からより多くの言葉を引き出せることを経験的に知っていたからかもしれない。

『お前達は二人とも間違っている。』

 埒のあかないやり取りにうんざりしたのか、とうとう竜魔が口を開いた。

『そもそも花が散るのは死ではない。次の季節へ移る段階の一つだ。』

 私達はぽかんとして振り返った。

『そういう話じゃないんですけど……。』

 項羽が苦笑をこぼした。

2009-06-14 09:00

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