桜恋唄
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Found It - 第2章 帰還 [5]

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「尺」って竜魔さん… (多分姐御はメートル法で伝えたと思われ

 私は唖然として竜魔を見つめた。どうやら彼の主張通り、あの女は単なる“彼女”ではないようだ。

「彼女は何者だ?」
「何れの集団にも属さない、流れの傭兵だ。裏の事情にはオレ達忍以上によく通じている。だから、華悪崇の一件のようなキナ臭い情報が引っかかったら即座に回してもらう約束をしているんだ。」
「それで、今回はどういう電話がかかってきたんだ。」
「別に事件ではない。オレ達が夜叉と戦っている頃、あの女も別件で近くに張り込んでいたらしくてな。項羽を助けたのはあいつなんだ。」
「!」

 私は思わず竜魔の顔を見た。

「周囲の状況と傷の具合から同業者だということはすぐ分かったらしい。しかし素人が手当てできる怪我でもなく、懇意の病院に運び込んだのだそうだ。ところが項羽は自分のことを何も覚えていなかった。それで仕方なく、退院後も医者の家で世話になっていたようだ。」
「その医者が佐々原か。」
「当然ずっとそのままにも出来ないからと、あの女が昨日になってオレに照会してきたんだ。年の頃十五、六。身長六尺弱、左前腕に古い刀傷あり。優男で羽根を扱う忍を知らないか。心当たりがなくても風魔の里で預かってもらえないか、とな。」

 私は何を言っていいのか分からなかった。

(……それで、佐々原依子は私に深くを問わなかったのか。)

 あの後戻ってきた彼女に「項羽を連れ帰りたい」と切り出した時、彼女は「お友達が見つかって安心しました」と一言述べただけだった。閑静な住宅地に裏社会に通じた医者が暮らしているのも驚きだし、何よりこんな近い距離で項羽が生きていたという事実が驚きだった。

「何だお前ら、こんなところにいたのか。」
「!」

 突然小次郎の声がして、私達は振り返った。

「早く来いよ、皆もう集まって大騒ぎだぜ。」
「ああ、すぐ行く。」

 竜魔が微笑した。

「やはり大した人気だな。オレと小次郎が聖地から帰ってきてもここまで歓迎してもらえなかったぞ。」
「……」

 無言の私を振り返り、竜魔は気遣うように言った。

「案ずるな、項羽の記憶はすぐに戻る。うちには精神治療の専門家がいるからな。」
「別に心配している訳ではないが、夢魔に任せるのか。」
「自分の足でここまで戻ってこられたのだから身体に問題はないだろう。記憶も社会生活を営む分には支障がないようだ。」
「いわゆる全生活史健忘……記憶喪失、か。それなら夢魔の範疇だな。」

 私は竜魔と共に、宴会場となっている道場へ向かった。足を踏み入れると項羽が板間の上で兄弟達に取り囲まれていた。皆が入れ替わり立ち代わり話し掛ける中、小龍だけがひと時も彼の傍を離れずくっついている。兄の生還ではしゃいでいる姿が何とも微笑ましい。

「項羽、」

 紙コップとジュースのボトルを手にし、彼の前へと進み出た。

「まずは、お疲れ様。」

 それだけ言って私はジュースを彼に渡した。項羽は戸惑うように私を見上げ、ただ細い声で「有難う」と答えた。

2009-06-14 09:00

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