桜恋唄
幽遊白書・黒鵺×蔵馬中心、桜枝真央の同人的創作の館

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Found It - 第2章 帰還 [3]

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自分で書いといて「モックなど何処で手に入れたのか」と思ってたら、アキバに売っていた…

 身支度を整え山を降り、地図の示す場所へ辿り着いたのは夕方だった。

「桜が丘八丁目……この辺だな。」

 市街地の外れにある住宅地。高台から見下ろす景色の中に、西日が輝く水平線が見える。山育ちの私には珍しい光景でつい足を止めて眺めてしまった。もうすぐ日が暮れる。一晩夜明かしして明日の午後までにはここを離れたいところだ。

(明るいうちに標的を確認しておくか。)

 私は早速、電柱や表札を頼りに目的の場所を探し始めた。しかし複雑に入り組んだ路地を辿るのは骨の折れる作業だ。しかもこの時間帯は飼い犬の散歩に出ている住民が多く、うろうろしている余所者はあからさまに不審人物だ。

(! ここか。)

 目的の家をようやく発見し、私は安堵の息をついた。玄関脇、カントリー調の郵便受けに「佐々原絹雄」という名が確認できる。そのすぐ下には「依子」「パルフェ」という名前が続いている。依子は恐らく絹雄の妻、パルフェは犬か猫だろう。と、突然玄関の扉が開いた。

「買い物行ってくるわね。」

 そう言いながら現れたのは中年の女性だった。私は電柱の傍に足を止め、懐から携帯電話を取り出して電話をかけるふりを始めた。こうすれば立ち聞きを怪しまれないと凪に教わったテクニックだ。もっとも電波など届くはずもない風魔の里、この携帯電話がモックアップであるのは言うまでもない。

「じゃあ今夜は湯豆腐にしましょうか。どうせあの人帰ってこないし簡単に済ませましょ。他には? あ、パルフェの御飯ね! 忘れてた。」
(なに?)

 怪訝に思い、私は視線の端で女性の様子を覗った。彼女は佐々原依子に違いない。しかし家の中にいるのは絹雄ではないようだ。表札に名前のない住人がいるのだろうか。それとも独立した息子か娘でも帰省しているのだろうか。

「悪いけどお花の水遣りお願いできる? じゃあ行ってきます。」

 そのまま依子は車に乗り込み、私の来た方向へと走り去った。明るい茶色の髪をした五十前後の女性。中肉中背で人の良さそうな丸顔……外見的特徴を記憶に刻み込み、私は再び家の中へ視線を移した。会話の相手は何者だろう。花に水を遣るのなら程なく顔を出すに違いない。とは言え流石に長電話の演技が辛くなり、私は何処ぞにメールを打つ真似を始めた。

 ギィ……

 思った通り、二分と立たぬうちに再び扉が開いた。すかさず注意を向けた私は次の瞬間、我が目を疑った。

「小龍……!?」
 ──どうして──

 何故今、小龍がここにいるのだろう。彼は今頃、風魔の里の工事現場で汗を流しているはずではなかったか。

「!」
(まさか!?)

 刹那、突飛な考えが頭を過ぎった。息苦しさを押し殺し、私は更に目を凝らした。ビニールホースを蛇口に繋ぎ、小龍に瓜二つの少年は肘までシャツの袖をまくった。

(……!!)

 カシャーン!

 模型が手から滑り落ち、アスファルトにぶつかって跳ね返った。少年の左腕を白い傷痕が斜めに横切り走っている。

2009-06-14 09:00

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