桜恋唄
幽遊白書・黒鵺×蔵馬中心、桜枝真央の同人的創作の館

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Found It - 第2章 帰還 [1]

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更にお断りしておくと既刊『adonis』シリーズとは繋がっていません

「おはよう、みんな。」
「おぅ、おはよう霧風。」

 朝食の後、私は今日も本陣の建設現場にやって来ていた。皆が住処を失った今、夜の避難所は男女で別の場所に分けられている。男達が寒空の下でテントを張る一方、女達は突貫工事で落成した道場の中で身を寄せ合って夜明かししている。私も夜警番の日以外は道場で寝泊りしている状態だ。

「霧風、知恵を貸してくれ。トラブル発生だ。」

 兜丸が話しかけてきた。

「何かあったのか?」
「適当に建て始めたのが悪いんだが、地面の下にとんだ障害物が見つかってな。」
「項羽のヤツが勝手に隠し部屋作ってたんだよ。」

 兜丸の横から小龍が口を挟んだ。

「項羽が?」
「部屋っつーか鉄の箱だな。小さい鉄板をちまちま溶接して、二畳くらいのデカい空間作ってやがった。」
「扉らしきものはあるんだけど、暗号式の鍵がついてて開けられそうもない。」

 梁と柱だけの建物をくぐり、私は問題の小部屋を覗き込んだ。土の中に錆だらけの金属の壁が顔を覗かせている。これ見よがしに取り付けられた巨大なダイヤルは、迂闊に回したら罠でも作動しそうな雰囲気だ。

「別に、また埋め戻せばいいだろう。」
「いや、それは……」

 小龍が口ごもった。立て続けに起こる事件に忙殺されていた彼も、暇が出来た最近はふとした折に項羽を思い出して顔を曇らせている。兄の存在の証拠を何とか残しておきたいという気持ちは分からなくもない。が、

「項羽の隠し部屋なんて不発弾も同然だ。埋め立てた方がよっぽど皆の為になる。念を入れてダイヤルはセメントで固めた方がいい。」
「またお前そういうことを……」
「流石霧風、死人にも手厳しい。」
「!」

 笑い出した兜丸に突如、小龍が気色ばんだ。

「おい待てよ、死んだとは限らないだろ!?」
「……は?」
「オレは、項羽はいずれ帰ってくるから処分するのはまずいって言ってんだよ!」
「えっ?」

 真顔の小龍に兜丸がぽかんと口を開けた。何か言おうとした彼を制し、私は小龍をなだめるように言った。

「ならば、基礎を少し動かして間取りを変えよう。この辺はまだ梁も渡してないしな。」
「エ!? おい霧風、」
「要するに、入口の上に基礎や柱が来なければいいんだろう? その代わりこの上の部屋は狭くなる。言い出したヤツの責任として、お前の部屋はそこに決定だ。」

 兜丸はぽかんと私達を見比べた。小龍は顔を赤らめ、小さく頭を下げた。

「……ありがと、霧風。」

 兜丸が溜息をついた。

「ったく、材木切直しだぜ。」
「どうせ素人の日曜大工だ。思うように進まなくて当然さ。」

 私は涼しい顔で答えた。と、その時。

「霧風、ちょっと来てくれ。」

 背後から竜魔の声がした。今日は朝から大人気だ。振り返ると彼の陰で風魔総帥が手招きしている。彼も華悪崇の刺客に深手を負わされ、ようやく床を出られるようになった今も杖が手放せない状況だ。

2009-06-14 09:00

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