桜恋唄
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Found It - 第1章 静かな春 [2]

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一応お断りしておきますがうちの霧風は女の子です…あとドラマではなく原作が元

「あーぁ、生き返るぅ!」

 夜も更けた里の外れ、露天風呂の一角。私の傍らで凪が気持ちよさそうに伸びをした。彼女は私より一つ年上で、主に女忍者で構成される諜報部隊のリーダーでもある。私と異なり戦闘訓練は受けていないものの、総帥からの信頼も厚い優秀な忍者だ。

「ほんと、労働の後のお風呂は格別。しかも今日は私達が最後だからゆっくりできるしね。」

 相槌を打ったのはつららという名の少女。彼女は私から見て一年後輩だが、大きな目と丸顔が彼女を実年齢以上に幼く見せている。

「……しっかし霧風、あんたのその怪我本当ひどいね。また痕が残っちゃう。」

 凪が振り返り、しげしげと私の真新しい傷を眺めた。

「これか? とっくに諦めてるよ。自分でやったものだしな。」

 私は肩をすくめた。死紋の精神支配で自分の体を貫いてしまい、私は数日間生死の境を彷徨ったらしい。目覚めたらみんなが私を心配そうに覗き込んでいた。

「もう、折角綺麗な顔してるのにあんたってば全身傷だらけ。顔に傷がつく前に早く引退したら?」
「別に気にしてない。私は戦闘員だから怪我は仕方ないさ。」
「そう言うけどあんた、好きな男が出来ていざって時が来たら絶対後悔するよ!」
「いざって、どういう時だっ。」
「分かるっしょ! 男に真顔で『お前が欲しい』って迫られた時よっ。」

 妙に力が籠もっている凪に、私は苦笑しながら首を振った。つららが無邪気に割り込んできた。

「でも本当に、霧風にはそういう人いないの? 本陣の男のコ皆カッコいいじゃん。」
「竜魔とかシビれるよねぇ。小龍はくノ一の中でダントツの人気だし。」
「あ、実はあたし兜丸好き! 一緒にいて楽しいもん。」
「麗羅や小次郎も将来有望の期待株だしさ!」
「……」

 すっかり盛り上がっている二人を尻目に、私はそそくさと湯から出て髪を洗い始めた。凪が再び口を開いた。

「そうだつらら、家の中にまだお風呂がなかった頃覚えてる?」
「覚えてるよぉ。あたし七つになるまでここに来てたもん。まさか家が壊れてまた来ることになるとは思わなかったけど。」
「そう。私それで昔、ここで項羽にひどい悪戯仕掛けられたことあってさ。」
(!)

 何気なく出て来た“項羽”の名前。私は思わず顔を上げた。

「私が入る直前にあいつがここに忍びこんでさ、蛙を放したの! こーんなでっかいヤツ! しかもお湯が熱かったせいで私が来たときその蛙、死んでたんだよね! プカーッと水面に浮いてるわけ!」
「えーっっ、最悪!!」
「冗談じゃなかったよホント。まぁあの後項羽のヤツ、総帥にこっぴどく叱られてやんの。ざまーみろって感じでさ。」
「きゃははははっ!」

 二人の笑い声が夜空にこだまし、すぐに再び静かになった。

「……本当に、色々とんでもないヤツだったよね。」

 凪がぽつりとつぶやいた。つららが頷いた。

「うん。でも、すっごく楽しいヤツだった。」
「まさか、こんなに早くいなくなるなんて思わなかった。」

 二人の言葉がそれきり途切れ、私が黙々と湯をかぶる音だけが闇の中に響いた。
 別段引きずるようなことではない。戦士として生まれた者が戦いの中で散るのは当然のこと。なのに何故、彼のいない日常は静かすぎて満たされないのだろう。

2009-06-14 09:00

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