桜恋唄
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Found It - 第1章 静かな春 [1]

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「Lost It」に対して「Found It」…安直で済みません

 長い冬が過ぎ、山間にもうっすら春の気配が漂い始めた四月の初め。風魔一族はこの半年、夜叉一族との一戦、華悪崇の侵攻に死紋の乱と息つく間もなく災厄に見舞われた。荒廃した故郷の復興のため全国に散っていた兄弟達が戻ってきて、風魔の里はここ数年なかった賑わいを見せていた。

「おーい、男共手を貸してくれ! この丸太運び出してほしいんだけど!」
「ちょっとぉ、あんた壁塗り下手すぎじゃない!?」

 家屋の再建に勤しむ兄弟達の声が響いている。私も焦げを繕い終えたばかりの畳を担ぎ上げた。途端、

「こら霧風、お前はまだ無理するな。」

 背後から竜魔にたしなめられてしまった。私はむっとして言い返した。

「別に、もう何ともない。心配性が度を過ぎると老けるのも早いぞ。」
「いいから大人しくしていろ! 傷口が開いたらどうするんだ。」
「そこをどけっ。」

 畳を引ったくられそうになり、私は慌てて彼を押しのけた。

「霧風!」
「過保護だぜ竜魔。それに、体動かしてる方がリハビリになるんだからさ。」

 振り返ると、両脇に角材を抱えた小龍がくすくす笑っていた。

「小龍! お前もまだ怪我が治って……」
「はいはい、危ないからどいた!」
「ったく、どいつもこいつもっ。」

 渋い顔の竜魔を後にして、私と小龍は坂を上り建設現場へと赴いた。私達の住処でもある本陣の復旧が目下の懸案事項だ。

「おぉ済まんな二人とも。そこに置いといてくれ。」

 釘を打っていた兜丸が顔を上げた。夜叉との一戦で刺客・飛鳥武蔵と対峙し死んだと思われていた彼だが、奇跡的に一命を取り留め風魔の里へ帰ってきた。

「あーっ兜丸さん! その梁、天地が逆ですよ!」

 割り込んできたのは兜丸の従弟・麗羅。彼も既の所で命を拾った強運の持ち主だ。

「ぎゃあ、やり直しかよ! おい琳彪、釘抜きこっちにパス!」
「おうよ。そらっ!」

 釘抜きが宙を飛んでいった。夜叉八将軍の白虎に深手を負わされた琳彪も、背中の傷が癒えて元通りの生活を送っている。

「畳は遠ざけといた方が良さそうだな。」

 小龍が苦笑した。

「何か手伝うことはないか?」
「おう、向こうで劉鵬が柱の鉋がけしてるからそっちに行ってくれ。」
「分かった。」

 辺りを見渡すとあちらこちらで同様の会話が交わされている。里は壊滅状態だが住人達は活気を取り戻し、以前の暮らしへ還ろうとしている。華悪崇のせいで忍の一族は何処も同様の状態。しばらくは大きな戦も起こらないだろう。

 しかし、着実に時間は流れていて二度と元へは戻らない。櫛の歯が欠けるように、兄弟達の数は一人二人と減っている。

2009-06-14 09:00

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