桜恋唄
幽遊白書・黒鵺×蔵馬中心、桜枝真央の同人的創作の館

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Lost It [4]

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多分二人とも、素直じゃない点でかなり似ている。

──まさか──

 まさかあれが永の別れとなるとは思わなかった。項羽自身予想もしていなかっただろう。夜叉との決戦のため任務先から呼び戻された時、仲間の輪に既に彼の姿はなかった。冬を待たずに彼は去り、約束は宙に浮いたまま置き去りとなってしまった。一体彼が本気だったのか、今となっては確かめる術もない。私は何故あの時、彼の言葉を素直に受け容れようとしなかったのだろう。

(だって……信じられる訳がないじゃないか。)

 風魔の曲者と呼ばれていた項羽。目的達成の為にはありとあらゆる非常識な手段を講じる男。軽薄浅慮を装いながら、周囲の状況を抜け目なく窺うしたたかな策略家。全てを鵜呑みにするのは危険すぎた。

(それに、そもそも有り得る話じゃない。あいつが私を? ……嘘に決まってる。)

 同期の間柄でありながら私と項羽は不仲で有名だった。関わるのも面倒と露骨に疎んじていた私と、それを知りながら無遠慮かつ不躾に絡んでくるあの男。互いの実力を認め合いながら、とても些細な、非常に表面的なことで私達は衝突した。いつ何処で歯車が狂ったのか、私達は今やそういう形でしか接点を持てなくなっていたのだ。

──でも──

 項羽と交わしたやり取りが幾つも幾つも頭に浮かんでくる。聞き流していたはずの言葉が何故か、私の心に引っ掛かり留まっている。いつもその繰り返しだった。棘だらけの言葉に怒りを覚えても、後から冷静に反芻すれば彼が本当に言いたかったことが見えてくる。……私達は似た者同士だった。本音で語らうことを極度に恐れ、発する言葉の上に私は苛立ちを、彼は冗談と皮肉を幾層にも重ねてぶつけ合った。衝突し合い腹を探り合いながら私達はきっと、心の底では繋がっていた。……少なくとも私は、そう信じていた。

(もし、あの約束が果たされていたら、私はきっと……)

 ひざまずき、私は燃え残った羽根を指でなぞった。命の終焉に彼は何を思っていたのだろう。戦いの途中で去ることを皆に詫びていたのだろうか。弟に後のことを託していたのだろうか。……様々な思いが巡る中、ほんの一瞬でもあの約束を思い出していただろうか。

「……項羽……」

 自然と彼の名が口をついて出た、その時。

「何してるんだ霧風。」
「!」

 虚を突かれ、私は弾かれたように振り返った。背後から現れた人影に私は激しく動揺した。

──あ──

(違う、項羽じゃない……。)

 戻ってきた小龍が立っている。大きな息を吐き、私は強く頭を振った。この期に及んで彼を項羽と見間違えるとはどうかしている。小龍は私の動揺に気づかず歩み寄った。

「崖の方にはいないみたいだ。そっちは……お前、そもそも探しに行ってないな?」
「……」

 私はのそりと立ち上がり、険しい顔の小龍に地面を指し示した。

「そこに、」
「何だ。」
「獣の足跡がある。雪のせいで大分消えかけているが。」
「……えっ?」
「更に言えば何かを引きずったような痕跡もある。ほら、白羽陣の陣形がそこだけ乱れているだろう。」
「!」

2009-02-09 19:41

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