桜恋唄
幽遊白書・黒鵺×蔵馬中心、桜枝真央の同人的創作の館

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Lost It [2]

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項羽の人生設計、母体にはかなり厳しい…。

「!」

 木立の中、不意に小龍が足を止めた。私も顔を上げた。張り詰めた冷気の中を焦げたような臭いが漂っている。

「近くか!?」
「項羽!」

 私達は駆け出した。昨日の雪がうっすら残る立木の奥に小さな空間が広がっている。飛び込むように足を踏み入れた私達は次の瞬間、広がる光景に目を疑った。

「……!?」

 濡れた土の上に散らばる、煤と灰と焼け残った白い羽根。激しい衝突の痕跡は数日を過ぎた今も名残を留めている。しかし、その中で散った男達の遺骸は跡形もなく消え失せていた。

 私達は戸惑いながら周囲を見回した。

「項羽だけじゃない、夜叉の忍びもいないようだ。」
「もしかして、柳生屋敷に乗り込んできたヤツが?」
「まさか。仲間はともかく敵の死体までわざわざ始末するものか。」
「とにかく手分けして探そう。」
「小龍!」

 拒否する間も与えずに小龍は森の奥へと消えていった。取り残された私は独り、規則正しく敷き詰められた羽根の痕跡を振り返った。

『オレと、付き合ってほしいんだけど。』

 三ヶ月前、蝉が騒がしい七月の暮れ。長期の任務に旅立つ直前「急ぎの話がある」と項羽に呼び出され、聞かされたのは思いも寄らぬ言葉だった。

『…… また得意の悪ふざけか?』
『違う、本気。』

 警戒心剥き出しの私に、項羽はいつもと変わらぬ口調で答えた。

『ずっと前から好きだった。早く告白 <コク> らないと間に合いそうもないから今言っとこうと思って。』
『間に合わない? 何に。』
『十八でお前と結婚して、オレ達そっくりの可愛い子供を三十までに最低十人。もたもたしてるとオレの人生設計に狂いが生じるだろ。』
『……は?』

 呆気に取られて項羽を見つめる。あの男は普段通りの薄ら笑いを浮かべていた。

『脳味噌が溶けてるのか? 何言っているのかさっぱり意味が分からん。』
『そういう女として問題ある態度も全部ひっくるめて愛してる。だから、オレと結婚を前提に付き合って。』
『……』

 平生と変わらぬ腹の底の読めない表情。向き合ううちに段々腹が立ってきた。横っ面を張り倒したい衝動を飲み込み、私は項羽に背を向けた。

『霧風!』

 あいつが声を上げた。私は苛立ちながら答えた。

2009-02-09 19:41

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